眠りたいのに眠れない問題を解消！専門家が提案する夏の快眠対策①

寝汗には、サラサラとしたものと、パジャマに張り付くベタベタとしたものの二種類があります。「サラサラした汗は副交感神経の働きによるもので、ベタベタした汗は交感神経が活発な状態を示しています」と睡眠専門家の菅原さんは説明します。汗腺は副交感神経には影響されず、交感神経が優位な状態では汗腺の活動が活発化し、ベタベタした汗が生じます。一方で、交感神経がオフになり副交感神経がオンになると、汗腺以外の皮膚からの水分蒸発、いわゆる不感蒸泄が主になり、サラサラした汗が生じます。
睡眠中はリラックス状態を促す副交感神経が優位にあるべきです。交感神経が優位な状態では、睡眠中でも緊張状態が続き、疲労回復が十分に行われません。寝る前に浴槽での入浴やストレッチなど、副交感神経を刺激してリラックス状態を促す方法を試してみましょう。

熱帯夜が続くと、暑さで眠りにつくのが困難になります。特に、気密性が高く熱がこもりやすいマンションなどの建物では、昼間の日差しにより寝室が夜まで熱を持ち続け、寝具も熱く湿気がちになります。この問題を解決するためには、帰宅後の対策が重要です。「帰宅したらまず枕や寝具をめくり、こもった熱と湿気を放出しましょう。その後、寝室のエアコンを使って室温を約25度まで下げておくのが効果的です」と睡眠専門家の菅原さんはアドバイスします。
寝具が乾燥して冷たい状態にあると、汗を吸収しやすく、体の深部温度を下げて眠りやすくします。また、夏用のレッグウォーマーで足首を温めることで、体温の放熱が促され、深部体温の低下を助け、暑い夜でも快適に眠ることができます。眠る直前にエアコンをつけるだけでは、寝具が暑く湿っているため、汗を吸収せず、深部体温の低下も期待できません。その結果、体だけが冷えてしまい、体調を崩す原因にもなりかねません。

眠りにつくことが難しい場合、その原因の一つとして「光」の影響が考えられます。夜になると体内でメラトニンの分泌が増え、睡眠への準備が始まります。しかし、現代生活では夜間でも明るい環境にいることが多く、これが不眠の一因となっています。自宅に戻ったら、部屋の明るさを抑え、暗い夜を演出することが重要です。「通常のリビングの明るさ（約500ルクス）に3時間いると、メラトニンの量は半減します。特に長時間過ごすリビングでは、メインの照明を消し、フロアライトなどの間接照明を使って、光が直接目に入らないようにすると良いでしょう」と睡眠専門家の菅原さんは提案します。
バスルームでは、脱衣場の照明のみを使用し、お風呂に入ることが可能です。廊下などには足元を照らす最小限の照明を設置すると、夜中にトイレに行く際にも部屋全体を明るくする必要がなくなります。帰宅後から朝まで、暗闇を意識した生活を心がけることで、睡眠の質を改善することが期待できます。

昼間の活動や残業後の興奮が夜になっても残り、眠りにつきにくいことがあります。このような場合に有効なのが、「頭寒足熱」の原則です。足を温めることで体の深部温度を下げ、頭部を冷やすことで脳を休息させることが、睡眠の質を高める鍵となります。三橋さんは、この目的のために小豆を推奨しています。「小豆約250gを袋に入れ、冷凍庫で凍らせます。この冷凍小豆を後頭部に当てると、頭が冷やされ、約15分間適度な冷たさが持続します」。
保冷剤と異なり、小豆は冷やすだけでなく温めることも可能です。電子レンジで温めた小豆袋を使って、首の後ろに当てることで、そこを通る太い血管を温めることができます。これにより、体の深部温度が下がり、より深い眠りにつきやすくなります。「足だけでなく、首の後ろを温めることで、全体的な体温調節に役立ち、リラックスして眠りにつくことができます」と三橋さんは説明します。

日中に感じる眠気は、体内時計のリズムによって引き起こされます。特に、午後2時頃のランチ後の眠気と、夜8時頃の帰宅後の眠気がその典型です。後者は特に注意が必要で、この時間帯にソファでリラックスしていると、つい寝落ちしてしまうことがあります。このような寝落ちが夜の睡眠リズムを乱し、本来の就寝時刻に眠れなくなる原因となります。
この問題を解決するためには、夜9時前後に行うべき活動を計画的に設定することが効果的です。「例えば、皿洗いなどの立ち仕事をこの時間帯に行うと、筋肉が刺激され、眠気が散らされます」と白濱先生は提案します。また、スクワットやシットアップなどの自体重トレーニングを行うことで、眠気を解消しつつ筋肉も鍛えることができます。激しい運動は夜には避けるべきですが、夜の短時間で軽めの自体重トレーニングであれば、交感神経を過度に刺激する心配もありません。このように、適度な身体活動を取り入れることで、夜の寝落ちを防ぎ、睡眠リズムを整えることが可能です。

夏の夜、快適な眠りへと導くための第一歩を踏み出しました。寝汗や熱帯夜、寝付きの悪さなど、夏特有の睡眠の悩みに対処するための専門家のアドバイスをご紹介しました。しかし、快眠への道はこれだけでは終わりません。次回の「専門家が提案する夏の快眠対策②」では、さらに深く掘り下げ、夏の夜もぐっすり眠るための具体的な対策をお伝えします。快適な夜を過ごすための準備を始めましょう。